古い建物のせいではなかった。

私たち夫婦は、とても古い建物に住んでいます。古いのはわかっていたのですが、結婚して同居を始めたときは、コンクリのお風呂の床に驚愕し、ぶるぶると凍えたものです。使っているうちに、ひとつ困ったことがありました。それはお風呂の排水溝の調子が悪くなった事でした。はじめは気にしていなかったのですが、お風呂を洗う時に水を流すと、詰まって流れてゆかず床に溜まり、敷いているスノコがプカプカと浮いてしまうほどでした。排水溝の網を取ってみても、なにか金属の物があるだけで、どうつまっているのか全く分かりません。「古い建物は困るなあ…。」と夫にぶつぶつ言いながらもどうすることもできず、毎回お風呂のお湯を流すたびに時間をとっていました。ある時、地域でまとめてお願いする、水道屋さんのチェックがあったので、お願いすることにしました。わたしはここでも「流れないんですよう。」と訴えました。水道屋さんは少しの間、お風呂の中で作業をしていたかと思うと、出てきて言いました。「やはり、排水の中にゴミがつまっていたようなので、取り出して、そこに置いてありますから!」わたしは、「やった。」と思い、ありがとうございますとお礼を言って、おかえりいただきました。その後、ひとりになって、「なんのゴミがつまっていたんだろう。」と、おそるおそるお風呂の中をのぞくと、そこにあったものは、10センチ近くもあるようなまっくろくろすけ、ではなく、わたしの髪の毛の塊でした。わたしは腰に届くほど髪が長く、それが全部流れ込み、排水溝にたまっていたようなのでした。水道屋さんは何も言いませんでしたが、わたしを見て「あー、この人の髪だなー。」と心の中で思っていたのかと思うと、「流れない」と不満を言っていた自分を思い出して、恥ずかしくなってしまいました…。古い家のせいにしてごめんなさい。わたしのせいでした。